人は“したくないこと”をする時、その行為に対して支払われるご褒美が多ければ多いほどやる気がでるのでしょうか?

結論から言いますと、答えは「ノー」です。

◆心理学実験

1959年にアメリカの心理学者によって実験が行われました。

概要

1. 被験者に1時間の単調なつまらない作業をお願いし、その後報酬を支払う(1$または20$)。

2. 被験者の次の順番の作業者に「この作業は楽しかった」と嘘の感想を伝えさせる。

3. 被験者に実験についてのアンケートを行う。

アンケート結果

1$報酬をもらった人の方が20$報酬をもらった人よりも「作業が楽しかった」「同じような作業があればまたしたい」と答えた人の割合が高かった。

実験者はアンケート結果をこのように解釈しました。

 

被験者の中で「作業は面白くなかったと実際に感じたこと」と、「作業は楽しかったと他者に嘘をついた」という2つの事実の間に矛盾(心理学用語で認知的不協和と呼びます)が生じました。

自分自身の中に生まれた認知的不協和を解消するため、報酬の大きな場合はその報酬によって自分の行動を合理化できますが、報酬が小さい場合は合理化が難しくなります。したがって、「作業は面白くなかった」という認知をなんとかプラスに変えて自分の行動における不協和を軽減させようとする心理的働きが行われます。

 

認知的不協和:人が自身の中で矛盾する認知を同時に抱えた状態、またそのときに覚える不快感。人はこれを解消するために自身の行動や態度を変更すると考えられています。

つまり、勉強することで大きすぎるごほうびを与えるのは、勉強=大きなご褒美をもらうに等しい苦痛なもの、という意識を子供に植え付けてしまうことにもつながります。

もちろん例外もありますし、伝え方でも効果は違ってくることもあるかと思います。

ご褒美を大きすぎないものにすることは、心理学的観点から言っても有効かもしれませんね。

参考文献:Leon Festinger (1957) [1954]. A Theory of Cognitive Dissonance. California: Stanford University Press. ISBN 0-8047-0911-4

原典:Abnormal and Social Psychology (1963)