こんにちは!一週間に一冊、おすすめの本を紹介していくコーナーです。

(前回はこちら)

今回ご紹介するのは『河岸忘日抄』堀江敏幸(2005,新潮社)です。

対象目安:高校生~

 

舞台はフランス、おおきな河に浮かぶ船に仮住まいをしている「彼」が主人公です。

陽あたりのいいリビング。本とレコードが並ぶ樫の木の棚。

居心地の良い小さな船での暮らしを娯しみながら、「彼」はよしなしごとに思いを巡らせます。

珈琲をのみながらのんびり暮らす「彼」のもとへ、やってくる客は郵便配達夫くらい。

世間と繋がっていないようで、繋がっていて。

孤独ともいえない孤独のなか、あいまいな境域をただよう「彼」の思考の軌跡は自由に飛翔します。

ブッツァーティ、チェーホフ、ツェランなど、ほかの作家の作品を引用しながら紡がれてゆく言葉のながれを、

ぜひ珈琲片手にたのしんでいただきたい一冊です。